研究概要 |
改変MS寒天培地上で培養した褐色(DB),半褐色(MDB),および白色(DW)のイチョウ培養細胞と葉とを含水アセトンで抽出し、得られた抽出液から酢エチ可溶層(Et-S層)と不溶層(Et-I層)を得た。このうちEt-S層中に含まれる物質をHPLCで分析した結果、前三者に目だった3つのピークが見られ、これらのピークの保持時間はそれぞれ同じであった。この3つの物質は葉のEt-S層にもすべて含まれており、それらの濃度はMDBが最も高かった。これは褐変に伴いこれらの物質が培養細胞中で一時的に増加するが重合も進行するため、生長阻害が起こり培養細胞は褐変・枯死することが示唆された。また、葉では培養細胞よりもその量がかなり多いことが分かった。これらの物質を検索し、カテキンとガロカテキンを同定した。 葉およびDBのEt-S層の培地への添加実験において、葉のEt-Sを添加した場合は少量でも激しい褐変と生長阻害が起こった。一方、BのEt-Sを添加した場合は、少量では逆に生長が促進され、白色の柔らかい良好な培養細胞が形成された。HPLCの結果から、培養細胞に含まれている物質は葉にも含まれており、それらの物質の中にカテキンとガロカテキンの存在が確認された。このほかにフラバノールモノマーかその二量体が含まれている可能性を得た。また、これらの物質は葉に多く含まれることから、前述の添加実験の結果はこれらの物質の濃度が起因しているものと推察した。実際、市販のカテキンを40mg/l添加した実験では褐変が引き起こされることが分かった。 以上の結果から、褐変を引き起こす原因物質として考えられているフラバノール・モノマーやプロアントシアニジン類は低濃度では褐変を防ぐ働きをし、高濃度では褐変を引き起こす作用をもつことが示唆された。
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