研究概要 |
日本産イチイ科樹木樹皮の抽出成分中より単離したtaxol(強力な抗ガン活性を有する)の組織培養による生産を試みた。 1.組織培養によるtaxol生産培地の検討 日本産イチイ科樹木,キャラボクの葉,軸を用い、これらからカルスの誘導を行った。培地としてMurashige-Skoog(MS)培地を用い、二種の植物ホルモンを(1)〜(3)のように組合せ、カルスの誘導に有効な植物ホルモンを調べた。(1)ナフタレン酢酸(NAA)-カイネチン,(2)2,4-D-カイネチン,(3)NAA-ベンジルアデニン(BA).(1)と(2)でカルスの誘導が認められたが、(2)の方がカルス誘導が早かった。また、(2)のカルス誘導の最適植物ホルモン濃度も明らかにした。誘導したカルスは3代継代して増殖させた。 2.組織培養によるtaxolの生産 カルス中のtaxol含量を調べた結果、母植物よりも、1.1倍taxol含量が高いことが判明し、組織培養によりtaxolが生産可能と考えられた。 3.Taxol生産におよぼすエリシター,植物ホルモン,生合成前駆体添加の影響 1)エリシター添加の効果:エリシターとして、キトオリゴ糖を用いた。添加量の増加と共に、taxol生成量も増加し、未添加に比べ最高10倍のtaxol生産が見られた。 2)植物ホルモン添加の効果:植物ホルモンとして、ジベレリン-A_3(GA_3)とカウレンの微生物変換により合成したジベレリン(GA_s)を用いた。GA_3の場合は、taxol生成量を最高3倍に、GA_sの場合は、最高5倍taxol生成量を増加させた。 3)生合成前駆体添加の効果:生合成前駆体として、フェニルアラニンを用いた。この場合は、最高3倍のtaxol生成量の増加が見られた。
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