研究概要 |
わが国で生産される化学パルプの98%はクラフトパルプである。このパルプは難漂白性の残留リグニンを含むため、塩素系薬品による多段漂白が必要とされている。しかしながら、漂白工程中の塩素化時には、人類がつくりだした最強の毒性物質である塩素化ダイオキシンが、微量ながら生成することが最近明らかとなっており、塩素を使わないパルプ漂白プロセスの開発は、緊急に解決すべき重要な課題となっている。本研究では、強力なリグニン分解菌を自然界から分離するとともに、その菌が産出するリグニン分解酵素を単離し、本酵素によるクラフトパルプの漂白プロセスを確立することを目的とした。 1.高活性クラフトパルプ漂白菌の探索.九州大学農学部地方演習林(北海道,福岡,宮崎),沖縄,石垣島,西表島より2500個の腐朽材を集め、245株の白色腐朽菌の分離に成功した。全菌株のクラフトパルプ漂白性を検索し、高活性クラフトパルプ漂白菌,YK-624株,KS-62株を得た。 2.リグニン分解粗酵素単離のための培養条件の検討.高活性リグニン分解菌,YK-624株,KS-62株の大量培養条件を検討し、両菌株ともにKirkの基本培地による振とう培養により多量のリグニン分解酵素の産生が可能であることが明らかとなった。 3.クラフトパルプ漂白系における酵素系の検索.未晒クラフトパルプに両菌株を接種し、漂白効果が顕著にみられた時点の酵素系を検索したところ、マンガンペルオキシダーゼの活性が顕著に観察された。 次年度は、マンガンペルオキシダーゼを中心に、酵素漂白を試みたい。
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