クラフトパルプの酵素漂白プロセスを確立するために、強力なリグニン分解酵素を産出する高活性クラフトパルプ漂白菌の探索を行った。九州大学農学部地方演習林(北海道、福岡、宮崎)および屋久島、石垣島、西表島を中心として、野外より約2000点の腐朽材を集めた。腐朽材より木材腐朽菌250株の純粋分離に成功し、すべての菌株を未晒クラフトパルプに接種した。短期間で顕著な漂白効果が認められる2菌株、Ks-62株、YK-624株の分離に成功した。 これらの菌株により酵素漂白が可能かどうか検討するために、メンブランフィルターを用いた培養法を考案した。これは菌糸とクラフトパルプが直接接触することなしに、菌体外酵素系のみがパルプに作用できる培養系である。このinvitro処理により、YK-624株は5日間の処理で白色度を約22ポイント上昇させ、既知菌株であるカワラタケやPhanerochaete chrysosporiumに比べて顕著な効果を示した。 この培養法における菌体外リグニン分解関連酵素活性を測定した結果、リグニンペルオキシターゼ、フェノールオキシダーゼ活性は、ほとんどみられず、マンガンペルオキシターゼ活性が顕著であり、白色度の上昇と明確な関連性が認められた。 即ち、本研究により白色腐朽菌によるクラフトパルプの白色化に寄与しているのは、マンガンペルオキシダーゼであることが明らかとなりクラフトパルプの酵素漂白プロセス確立のための基礎資料を得ることができた。
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