研究概要 |
サクラマスの塩分耐性および体型その他数量形質に関する遺伝性と有用形質の育種学的研究を進めているが、その中で、幾つかの形質について個体間に変異がみられ、特に、稚魚期の塩分耐性に関しては家系による違いとその遺伝性が明らかにされ、育種目標になり得ることを明らかにした。また体型については頭長比、体高比について、個体差が大きく家系集団の分離飼育が不可欠であった。本研究では半兄弟10家系に更に全兄弟10集団および、半兄弟10集団を加え、合計30家系を作り出した。これらの家系を全て分離飼育することは施設の関係で極めて困難な状態となり、個体識別に使用されるPITダグを使用し、更に生化学的識別法として最近注目されているDNAフィンガープリント法について検討した。特に本研究ではアイソトープを用いないコールドプロープ法について検討し、相DNAのフィンガープリントのバンドの検出を試みた。材料として、サクラマスと同様に残留型と降河型の2型分化の起る方ショロコマを使用した。核DNA(以下nDNA)の抽出には血液を用い、フェノール、フェノールクロロフォルム、クロロフォルム処理により除蛋白し、その後エタノール沈澱により高分子nDNAを得た。このようにして得られたnDNAを5μgとり、四塩基認識制限酵素のHaeIIIで37℃で一晩処理し、0.8%アガロースゲルで電気泳動を行った。DNAが適当に分離したところで泳動を終了し、DNAをアルカリトランスファーによりゲルからナイロンメンブランへ移し、そのナイロンメンブランを乾熱処理(80℃,30分)することによりDNAをナイロンメンブランに固定した。ブローブにはM13を使用し、ハイブリダイゼーションにはランダムプライム法によりジゴキシゲニン-11-αUTPが標識されたものを用いた。バンドの検出にはELISA法を用いた。4-20Kbの位置に個体差のある10本程度のバンドが検出され、個体識別が可能と判断された。
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