1. 三倍体マガキの性成熟過程の定量組織学的検討 宮城県万石浦における三倍体マガキの性成熟過程を、画像解析装置を用いて定量組織学的に詳細に検討した。その結果、従来、三倍体マガキでは高頻度に出現することが知られていた雌雄同体個体は、性成熟の過程で生殖巣が雄相から雌相に転換する過程の個体が、雌雄同体個体として観察されることが明らかになった。すなわち、三倍体では、二倍体に比較して性成熟の過程で生殖巣が雄相から雌相に転じる個体が非常多く出現し、その現象は、年齢が高い群ほど顕著にあらわれ、その結果として、三倍体3年貝の生殖期における性比が0.1程度に極端に偏ることが明らかになった。 2.マガキ成貝からの染色体標本作製法の検討 二枚貝類の成貝では、細胞分裂の頻度が著しく小さく、例えば三倍体であることが確認された個体から、確実に染色体標本を作製し、その核型を検討することは容易ではない。そこで、本研究の目的を達成するため、マガキ成貝からの染色体標本作製法について、標本製作に最も適した組織、コルヒチン処理法、低張液処理法を種々検討した。その結果、0.2mlの0.3%コルヒチン海水を閉殻筋に注射し、12時間後に鰓前縁部を切出し、さらに0.01%コルヒチン海水で6時間インキュベートした後、0.075M KCl溶液で30分間低張液処理を行う方法が最も良好な結果を示した。本方法では、1プレパラート当り平均50以上の分裂中期像を得ることが出来、染色体の伸展度も比較的良く、核型分析に十分用いることも十分可能であった。
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