1.宮城県万石浦で養殖した三倍体マガキでは、生殖期間内に雄相から雌相に転換する個体が多く出現し、その結果として雌雄同体個体が高率で出現し、産卵盛期における性比の極端な片寄りがみられること、さらに、そうした性転換は放卵放精をきっかけとして起りうることが明らかになった。 2.鰓が2nと3n細胞のモザイクになってる三倍体マガキが確認された。 3.生殖巣のグリコーゲン量およびグリコーゲン合成酵素活性は、性成熟期に二倍体では大きく減少するが、三倍体ではほとんど減少しなかった。 4.生殖巣、閉殻筋、におけるグリコーゲンホスフォリラーゼ活性は、二倍体と三倍体で有意な差はなく、また季節的な変動も小さかった。 5.生殖巣における遊離型のE2は、性成熟に伴って増加したが、二倍体と三倍体では有意な差は認められなかった。 6.まとめ:マガキは成長に伴って雌の比率が高くなる。三倍体ではこの傾向が非常に強く、生殖期間中に放卵放精をきっかけとして性転換する個体が高率で出現する。その際、マガキの蓄積エネルギーであるグリコーゲン量は三倍体は二倍体より多いが、マガキでも雌性ホルモンとして機能していると考えられているE2量に三倍体と二倍体で有意差がなかった。したがって、ホルモンレベルで雌個体の増加や性転換が生じている可能性が少なく、マガキの性分化は、遺伝的要因の他に、栄養レベルがかなり大きな影響を及ぼしている可能性があると考えられる。
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