研究概要 |
ウシケノリBangiaはアマノリ属Porphyraと同じBangia科に属する毛状葉状体の原始紅藻である。本実験ではウシケノリとアマノリの細胞融合による雑種作出を行うための基礎研究として、ウシケノリからプロトプラストを作出するための条件を検討した。ウシケノリからプロトプラストを作出するために必要な細胞壁溶解酵素β-1,4-マンナナーゼ、β-1,3-キシラナーゼ、ポルフィラナーゼは海域から単離した細菌Vibrio sp.HA-138、Alcaligenes sp.-XY-234、Vibrio sp.PO-303からそれぞれ調製した。これら細胞壁溶酵素で葉体を処理する前に5%パパイン溶液で処理すると、パパイン無処理に比べて約8倍のプロトプラストが遊離した。反応液のpHは7.5の時最大であった。また、海藻プロトプラストの浸透圧剤として、一般に0.7〜0.8Mのマンニトールなどが用いられている。本研究では種々のマンニトール濃度におけるプロトプラスト数を比較した結果0.5Mで最も多く遊離し、無添加でもかなりの数が遊離した。細胞融合を行うためには10^4〜10^5のプロトブラストが要求される。我々が開発した細胞壁溶解酵素の各1vnitの混液を用いると22℃、15分反応で10^5コのプロトプラストが単離された。次に、ウシケノリからプロトプラストを単離する上で上記三種数の酵素がすべて必要であるかどうかを調べた。その結果、マンナナーゼとキシラナーゼの組み合わせではプロトプラストは遊離しなかったが、ポルフィラナーゼは単独でも若干の遊離がみられた。単離したプロトプラストをASP_<12>(NTA)培地を用いて17℃、照度3,000lx、1日15時間照明で培養したところ、4日目で細胞分裂が始まり、20日目で数mmの葉状体へ生長した。なお、大部分は正常な葉状体へ生長したが、いくらかは不規則な形のカルスを形成した。これら葉状体ならびにカルスから放出された単胞子はほとんどすべてが正常な葉状体へ生長した。
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