本研究ではブリのリンパ球亜群を分類するため、ブリの胸腺細胞の性状を調べたのち、胸腺細胞を免疫源としてTリンパ球を認識するモノクローナル抗体(mAb)の作製を試みた。ブリ胸腺細胞上の表面マーカーの存在性について調べ、その性状をほ乳類と比較すると、ヒツジ赤血球レセプター保有性が異なるほかは類似したことから、胸腺細胞をT細胞として用いれることが示唆された。そこで、ブリから採取した胸腺細胞でマウスを免疫し、ハイブリドーマを常法によって作製した。得られたハイブリドーマのうち、胸腺細胞には反応するが、赤血球にはしない抗体を産生するクローンをELISAで選択し、マウス腹腔内で培養してmAbを調製し、得られた抗体をYeT-2と名付けた。各種リンパ組リンパ球を分離し、それぞれの反応性をEPICS756でフローサイトメトリー解析したところ、YeT-2は未梢血の89.7%、脾臓の87.5%、頭腎の59.7%、および胸腺のリンパ球の69.8%と反応した。ウエスタンブロッティングの結果、Yet-2は約115kDaの白血球膜タンパク質と反応することがわかった。YeT-2を用いたパニング法で末梢血リンパ球をYeT-2抗原を保有する細胞と保有しない細胞に分離し、それぞれのリンパ球群のマイトジェンに対する反応性を調べたところ、YeT-2 抗原保有細胞はほ乳類のT細胞を刺激するConAと反応し、B細胞を刺激するLFSとは反応しなかったことからT細胞に、YeT-2抗原非保有細胞はLPSに反応し、ConAとは反応しなかったことからB細胞に同定できた。 以上のように、本mAbを用いることによって、ブリのリンパ球のTおよびB細胞の亜群に分類できることが明かとなった。
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