(1)アマダイ科魚類の雌雄性 長崎県深浦漁協よりシロアマダイ、鹿児島市魚市場よりキアマダイ、京都府宮津魚市場よりアカアマダイの標本を購入し、その生殖腺の組織切片を作り検討中である。今までの結果によると、いずれの魚種でも雄は大型で小型個体が得られない、雌雄の体長が重複する範囲内で両性生殖腺を持った個体が出現することなどから雌から雄に性転換している可能性がある。しかしながら、決定的な性転換の証拠である二次精巣や卵巣から精巣への転換を示す組織像は未だ得られていない。現在、雌雄の体長差が何故生じるか明らかにするため、それぞれの魚種について年齢査定を行っている。 (2)採卵技術 日本栽培漁業公社若狭湾宮津支所では100トン水槽にアカアマダイ親魚約200尾(性比不明)を飼育し採卵を試みてきたが、大量の卵が得られるにもかかわらず、受精率が1%以下と低く、種苗生産を行うには不十分であった。そこで、研究代表者は若狭湾に赴き、飼育状況と飼育魚の行動を観察するとともに、アマダイ科魚類の雌雄性からみて適当と思われる雄1尾、雌5尾の組み合わせを作った。その結果、受精率は約20%まで向上した。しかしながら、何故受精率が20%以上(すなわち雌1尾分以上)にならないのか現在のところ不明であり、水槽で飼育することの雄成熟への影響、卵の成熟状況および夜間に産卵するアカアマダイの産卵行動の観察方法について現在検討中である。 また、飼育下のアカアマダイの性転換を明らかにするため、日本栽培漁業公社若狭湾宮津支所で性別のはっきりした個体に標識を付けて継続して飼育中である。
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