細胞融合実験に使用するプロトプラストの作製条件(材料・細胞壁融解用酵素の組み合せと濃度・処理時間・温度)の検討を行った。その結果、材料としては緑藻のアナアオサとウスバアオノリが適しており、酵素はアメフラシ中腸腺から得た粗酵素に市販のセルラーゼ、マセロザイム等を1〜2%濃度で溶かし、pH6〜6.5、20℃、3時間の処理をすれば、プロトプラストが得られることが判った。このプロトプラストを用いて、細胞壁の再形成に必要な時間、プロトプラストの倍養条件を検討した。その結果、温度が低いほど細胞壁の形成速度がゆっくりとなること、日長、照度は温度程クリティカルに影響を及ぼさないことが明らかとなった。また、アナアオサはプロトプラスト形成後、1〜2時間の間に細胞壁の再形成が80%以上の頻度で観察されたのに対して、ウスバアオノリのそれは6時間までは細胞壁の再形成はなく、12時間たつと100%に達っした。このことから細胞壁再形成には種により相違のあることが明らかとなった。藻体の部位の違いによりプロトプラスト形成への影響について調べたが、両種とも仮根部に近い処ではプロトプラストの収量が少なかった。一方、藻体の生育時期、生育場所の相違によるプロトプラスト収量の変化について調べたところ、アナアオサは10月以降、2月までの期間はプロトプラストの作製が困難で収量も極端に減少した。この結果は採取した生育場所全てで見られた。これに対してウスバアオノリでは、10月以降、2月までの期間でも多少の変動はあったもののプロトプラストが得られ、全ての生育地点で同様な結果が得られた。 本年度の結果から、上に示した酵素処理、培養条件でプロトプラストを作製、培養すると、そのプロトプラスは細胞壁を再形成し、元の個体と再生することが確認できた。また細胞融合実験の材料としては細胞壁再生形成時間がゆっくりしているウスバアオノリが適していた。
|