ウスバアオノリを材料にプロトプラストを作った。細胞融合条件は作ったプロトプラストにより、一回一回、異った。また、昨年と異り、バーストとするプロトプラストが今年は多かった。融合細胞は、双極性の発生様式を示し、一方の極からはクロロプラストを2個含む葉状体が、他方の極からは付着器官を形成する仮根細胞が伸長した。この発生様式は、これまでに知られている有性生殖による生殖細胞の発生様式と異なる2点はみられなかった。融合率は、0.2〜0.25%と低かった。融合細胞から発芽した葉体は、死滅するものが多く、換算に生長し成熟した葉状体を作るまでには、至らなかった。この理由として、融合細胞の分離方法に問題のあることが判った。また、分離後、融合細胞を物理的ショックの少ない状態に保つことが重要であることも判った。 融合細胞から完全な成熟個体を作ることはできなかったものの、融合細胞が双極性の発芽様式を示したことから少くとも、細胞融合によるウスバタオノリの倍数体の形成は可能であり、これを基にした種苗育成も十分に可能であると考えられる。このためには、融合細胞の分離、培養技術の確立が最も重要であることが判った。分離技術としては、マイクロピペット法を使用すること、分離前に培地の浸透圧を融合前よりも高目に濃度勾配法により行うことが最も安定した状態で融合細胞を取り扱うことができるものと考えられる結果が得られた。
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