研究概要 |
魚油に含まれるイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)など薬効・薬理作用のある高度不飽和脂肪酸は、生体内では通常トリグリセリドやリン脂質(グリセロ脂質)の形態で存在する。したがって、これら脂肪酸の生体内での役割を明らかにするためには光学異性体を区別して分子種レベルで研究されねばならないが、光学異性体を区別する高感度かつ実用的な方法は開発されていない。このため、本研究ではクロマトグラフィー(HPLCおよびGLC)による魚油グリセロ脂質(骨格としてのジグリセリド)の光学分割法の開発を試みた。 平成4年度では、高度不飽和酸(リノール酸,リノレン酸,アラキドン酸,EPA,DHA)含有ジグリセリド(DG)を微生物リパーゼ(Candida cylindracea)を用いて合成し、これらを市販の光学活性カラムを装備したHPLC(キラル相HPLC)により光学分割する方法を検討した。その結果、EPA,DHAなど高度不飽和酸を含むDG(sn-1,2-およびsn-2,3-)は飽和およびモノエン酸含有DGと同様に短時間で完全に光学分割され、光学純度ほぼ100%の高度不飽和酸含有DGエナンチオマーを得ることができた。現在、得られたDGエナンチオマーを極性キャピラリーカラムを装備したGLCによって分析する方法を検討している。平成5年度は、この方法を食用となる代表的な魚種(イワシ、サバ、ウニなど)のグリセロ脂質(トリグリセリドおよびリン脂質由来のDG)に適用し、光学純度ほぼ100%のエナンチオマー(sn-1,2-およびsn-2,3-ジグリセリド)を得たのち、両エナンチオマーを極性キャピラリーカラムを用いるGLC(極性GLC)によって分析し、各エナンチオマーの分子種組成を詳細に求める方法を確立する。
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