研究概要 |
1.ヤツメウナギ体表粘液からの粗毒は,マウスへの静脈投与により粘液1gで約70匹のマウスを殺し得ると見積られた。粗毒には溶血活性および赤血球凝集活性はみられなかった。ゲルろ過挙動から毒の分子量は5〜6万と推定されたが,4℃あるいは-20℃貯蔵でも数日で完全に失活するというように非常に不安定であり,精製にあたっては安定化方法を確立しなければならないことが示唆された。 2.ヤツメウナギ卵巣から調製した粗毒は,マウスへの静脈投与では卵巣1gで約400匹のマウスを殺し得る毒性を示した。マウスへの経口投与でも約1/10の毒性がみられ,食品衛生上の注意が必要と考えられた,粘液毒同様に,粗毒には溶血活性ならびに赤血球凝集活性は検出されなかった。また5種微生物に対する抗菌活性も認められなかった。毒は4℃および-20℃での貯蔵,pH変化(1〜12)に対しては安定であったが,70℃,5分の加熱処理ならびにトリプシン処理により完全に失活し,タンパク質であることが判明した。なお,クロロホルム・メタノール抽出物は毒性を示さず,毒はジノグネリンとタンパク質の複合体でないことも確認できた。HPLCを含めた各種クロマトにおける挙動を調べた結果,毒はCM-セルロース,ヒドロキシアパタイトならびにHPLCゲルろ過により精製することができた。毒は分子量約2万の塩基性タンパク質と推定され,その他の諸性状については目下検討中である。 3.54種魚類の体表粘液について有毒成分を検索し、ウナギ目魚類4種はきわめて強い毒性を示すことを明らかにした。その他ではドジョウなど5種にも弱いながらも毒の存在を確認した。卵巣毒に関しては,ニジマス,シイラなどこれまでに調べた13種魚類はすべて陰性であった。
|