本研究は海藻の粘質多糖が民間で各種の成人病に服用されている点に着目して、循環器疾病に対する作用を調査研究したものである。 1.海藻26種粉末を食餌性高血圧、高脂血症を起こさせたラットに投与して、抗高血圧と抗高脂血症作用を調べた。食用海藻を含む13種の海藻に血圧と血清中の抗コレステロール(TC)、遊離コレステロール(FC)、中性脂肪(TG)、低比重リポタンパク質(LDL)の低下作用が認められた。また、使用した海藻の46%が血清中の高比重リポタンパク質(HDL)水準を上昇させた。活性が高かった原藻から抽出した粘質多糖のアルギン酸、フコイダン、ポルフィラン、フノランに血圧、血清中のコレステロール値の改善効果が認められたが、紅藻マフノリのフノランが顕著であった。 2.精製フノランの平均分子量は約9万であり、化学組成をモル比で見るとガラクトース、3.6-アンヒドロ-ガラクトースと硫酸含量が夫々39、34、31であった。食餌性高血圧、高脂血症を発症したラットを用いフノランを投与すると血圧は低下し、排泄量と尿中の電解質の排泄が増加したことから、フノランの血圧低下作用は利尿を促進し、尿中Naの排泄能力が高まったものと考えられた。 3.フノランは血清中のTC、FC、TG、LDLと動脈硬化指数AI値を低下させるとともにHDLが上昇した。また、肝臓の総コレステロール量に影響を与えず、糞中コレステロールの排泄が顕著に増加したことから、フノランの抗高脂血症作用は血中および末梢血管から肝臓へ脂質転送後コレステロールの蓄積を伴わず、血中の脂質を糞中に排泄せしめたものと考えられた。 以上の成果は自然食品である海藻を長期間継続的に摂取すれば、最近増加傾向が著しい循環器疾患に有効な食品となることを示唆している。
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