研究概要 |
瀬戸内海のナマコ(Stichopus japonicus)から分離した多糖生産性海洋細菌Pseudomonas sp.HA‐318の生産する多糖は、硫酸化することにより強い抗HIV‐1活性を発現したことにより、その化学構造を解析し抗ウィルス活性との関連を明らかにする目的で研究を行った。本多糖は、セルロースアセテート膜電気泳動で分析すると均一性の高いことが認められたが、0.01Mリン酸緩衝液で平衡化したDEAEセルロースカラムクロマトに吸着後、0〜1M NaC1を含む同緩衝液で溶出させると硫酸基含量の違いにより3画分に分かれた。硫酸基含量(Sとして)は、5.6,8.8,9.9%となりHPLCによるゲル濾過では分子量はそれぞれ1.9x10^5,1.2x10^5,2.3x10^5と見積もられた。福島県立医大(細菌学講座 茂田士郎教授)で実施された抗ウイスル活性試験結果から、それぞれに対応した抗HIV‐1活性は0.69,1.5,1.6ug/mlを示し、硫酸基含量5.6%で最も強い活性が得られた。このことは、この硫酸多糖で得られたこれまでの結果に一致し、デキストラン硫酸よりはるかに低い硫酸含量でより強い活性が示されたことになる。この5.6%硫酸含量画分は、超遠心分析で均一性の高いことが示され、酸加水分解後ペーパークロマト、HPLC,GLC,イオンクロマト等で分析した結果ガラクトロン酸:ガラクトース:N‐アセチルフコサミン:硫酸基=3:1:1:1のモル比と認められた。これは、元の多糖からピルビン酸が離脱し糖残基のいずれかの水酸基に硫酸基が導入されたことを示している。今回の結果からは、硫酸基含量5.6%に強い活性が得られ、これより高い含量では活性の低下が認められたが、糖残基のどの水酸基に硫酸基が結合しているかについては明らかに出来なかった。HPLCを用いたゲル濾過により分子量測定では多糖水溶液の粘性の影響を受けて過大値を示していると思われるので次年度では、超遠心法、光散乱法等によっても測定し分子量と活性との関係を詳細に調べたい。また、新たに設置されたNMR分析により構造解析を実施したい。
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