本年度は、鹿児島湾沿岸海水およびクルマエビ養殖場海水から分離したサプロスピラ属(Saprospira)細菌の代表3菌株について、菌体脂肪酸組成および殺藻活性の発現機構について検討した。得られた結果の概要は以下の通りである。 1.Saprspira属3菌株の菌体脂肪酸組成としては、SS90-1株とSS91-40株ではC16:0(パルミチン酸)、C20:4(アラキドン酸)、2-OH C17:1が主体であり、SS92-1株ではiC15:0、iC15:1(C15:1)、20H C15:0が主体であった。 2.Saprospira属細菌は藻類重層寒天平板ではプラークを形成したが、培地中にペプトン、グルタミン酸、リンゴ酸等のアミノ酸や有機酸を添加しておくとコロニーを形成した。 3.Saprospira属細菌は、宿主としてChaetocerosceratosporumの他にSkeletonemacostatumに対しても顕著な殺藻活性を示した。 4.藻類液体培養液に菌体懸濁液を添加した場は、急激な濁度の低下が見られたが細菌単独培養上清液では、菌株によって藻類増殖を阻害するものと阻害しないものがあり、細菌藻類混合培養上清液では全く藻類増殖阻害が見られなかった。 以上の結果から、Saprospira属細菌の殺藻活性については、細菌細胞が硅藻細胞と直接接触した時に初めて、藻類細胞に対して溶藻酵素または菌体表面成分が作用する機構が考えられる。
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