本研究では、さまざまな環境評価の手法を検討することによって、より一般的な手法の確立のための基礎的研究をおこなった。本研究では、従来の手法とことなり、外部効果をシャドウプライスと市場価格の差額と統一的に捕らえるという考え方に立つ評価方法の確立をめざした。この立場に立てば、各財のシャドウプライズを統一的な枠組みの中で推計することが問題となる。そこで第一に、貿易財・非貿易財・本源的生産要素のシャドウプライを線形一般均衡モデルを解くことにより求め、その計測式を産業連関表に適用することによって推計した。ここでの成果は、計測可能なシャドウプラス計測式の導出であって、具体的な環境評価手法確立のための第1歩であると位置づけられよう。 第二に、従来の計測手法の問題点を明らかとするため、ヘドニックアプローチをとりあげ若干の問題提起をおこなった。すなわち、従来の計測例では、水田が都市住環境としてプラスの評価であるとの計測結果が報告されているが、ここではより千葉市のメッシュデータを用い、よりミクロな観点から、また関数型を変えることによって従来の計測結果を検討した。これによると、第一に水田と公園等の緑を結合したモデルは統計的に棄却され、分離モデルによって計測した。分離モデルでは、公園等の緑は、環境評価がプラスであるが、水田は、マイナスと評価されている。さらに関数型をかえることによって評価額がかなり変わりうることも明らかとなった。これによりヘドニックアプローチでは、関数型ならびに水田と公園等の緑をどう扱うかなどの仮定によって環境評価額が決定的に依存していることが明らかとなった。このことは、こうした手法による評価には十分慎重になる必要があることを示唆している。
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