GATTにおける貿易交渉が象徴するように〈各国政府が独自の判断で農業政策を遂行することは次第に困難になってきている。このことはカロリーベースの食料自給率が50%を切ってしまった我国の農業政策と言えども例外ではなく、国際的な理解なくしてその遂行はもはや不可能に近いと言える。しかしながら、このような政府間交渉において現在使われている保護の程度などを計測した基礎資料は、PSEやCSEなどに見られるように、部分均衡的なものが主流であり問題点も多い。このような点を考慮し、平成5年度は日本と韓国についてDRCの変化を計測し、それらを政策の推移と対比させることにより、政策が国際競争力を高める方向にあったのか否かが検討された。 まず、生産ヴェクトルX、要素賦存ヴェクトルF、投入係数行列A、価格ヴェクトルをPとし、Srinivasan & Bhagwati的な社会的厚生関数U=P'Xを想定し、要素のシャドウプライスをW=P'A^<-1>でもとめた。次に、固定価格表示の産業連関表を用いて政策介入後の投入係数を選定し、それをDRC=W'a^J/p^Jにおける新規プロジェクトの投入係数とみなすことにより政策一評価を行った。 結果を見ると、日本、韓国ともに1980年代後半に採用された技術は公共プロジェクト評価の観点から適当であったことが判明した。ただし、用いたデータの精度にはまだ問題も残っており、来年度に再推計する必要がある。
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