地域資源の利用という観点から、農村と都市の関係を歴史的・理論的に検討し、あわせてその現代的意義と展開方向を現実の動きの中に探究することが、本研究の課題である。当面、もっとも基本的であるとともに、賦存量が固定的であるために、都市と農村の間で利害対立の生じやすい土地と水を中心に研究を進めた。 平成5年度は和歌山県紀ノ川流域を主な調査対象地とし、そのほか兵庫県姫路市(平成4年度の継続)、横浜市、大阪府でも実態調査を行った。調査地では、土地の農業的利用と非農業的利用の競合・共存関係、河川・溜池の新たな用水配分システムとそのコモンズ的な利用の可能性の2側面から、都市と農村の対立と共生関係について研究した。 農村住民は農外就業への依存を深め、また都市民はゆとりのある自然に恵まれた生活、さらには市民農園などへの需要を強くもち、両者の競合とともに結合的関係も深まっている。他方で、河川の上下流では社会経済的格差が大きく、流域圏としての一体的地域計画が必要である。 上記の研究結果についてはさしあたり、『近畿圏における新しい都市・農村関係の展開(2)』1993年3月、『同(3)』1994年3月予定(いずれも京都大学農学部農学原論研究室発行)としてとりまとめた。また、祖田は日本学術会議地域農学研究連絡会議主催のシンポジウム「21世紀の地域農業を考える」(1994年5月13日開催)において、「都市と農村を結ぶ」との研究報告を行う予定である。 上記の成果を踏まえ、日本農業経済学会、地域農林経済学会、日本村落研究学会等において口頭報告を行い、順次学会誌等に公表していく予定である。
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