研究代表者・祖田修は現地調査の結果に学びつつ、都市と農村の間に取り結ばれる諸関係を理論的・歴史的に明らかにした。主な解明点は以下の通りである。従来都市農村関係は、どちらかといえば対立・葛藤するものとして捉えられてきた感がある。しかし両者は対立葛藤しつつ、同時に相互に補完し結合している存在である。産業や人口の大都市集中とりわけ一極集中によって、地方都市やそれを取り巻く農村地域が疲弊しただけでなく、都市民もおよそ半数が地方圏への脱出を希望している現実がある。つまり、農村では安定兼業の場確保、大都市と同等とまでいかなくとも生活の利便性への要求が高まっている。他方都市では緑や自然、広い住宅、ゆとりのある農村的リズムを持った生活への要請が高まっている。こうした要請を、地方中小都市の振興によって達成することが必要である。ドイツではすでに早くからそのような思想にたって、地方分散的な国土政策・地域政策を行なってきた。その内容を明らかにするとともに、日本における分散的地域政策の方向は、櫛状多数核分散型地域政策であることを明らかにした。 研究分担者・池上甲一は、地域資源のうちでとくに水をめぐる都市と農村の関係を研究した。主な解明点は、以下の通りである。水利をめぐる都市と農村の関係は、農業用水の都市用水への転用要求のように用水配分の競合として現れることが多かった。しかし、都市社会が高度に人工空間化されると、農業用水をそのまま都市空間の中に調和的に保全しようという気運が高まってくる。ゆとり空間、治水や景観上のバッファー、水辺生態系とのふれあいなどの役割が求められるからである。大阪府羽曳野市のピーチパークのように、溜池を都市と農村のコモンズとして活用していくことは、都市・農村の共生を実現するひとつの方向である。
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