研究概要 |
今回の報告は,本課題による2年継続研究の第一年度のもので,その概要は以下のようである。 一般に農産物ばかりでなく工業製品においても,市場競争力を規定するものは価格と品質とされる。さらに価格は,その基礎をコストにおいており,品質は生産物の効用,機能の高さによって規定されている。 そこでまず,価格競争力を高めるためのコスト低減の理論体系を考察すべく,そのマクロ理論としての生産関数論と,ミクロ理論としての費用関数論を中心に検討を加えたが,これらは何れも単一作目についてみた場合のコスト低減理論であり,経営体に受れ入れられて実践できるかどうかは,明らかにできない。経営として成立しない生産理論は,その作目にとって如何に合理的なコスト低減理論であっても,実践性に乏しい。 以上のようにこの第一年度の研究で明らかになったことの1つは,各作目別のコスト低減理論に沿った低減策が,経営として容易に受け入れられる関係づくりこそ,国際価格競争力をもつ経営体の確立に,極めて重要ということである。第二年度は,そうした経営構造を解明し,国際市場競争力をもつ経営体の確立方策を検討したい。 一方,品質競争問題についてであるが,近年の有機農産物や無農薬農産物に対する消費者の欲求でみられるように,農産物の品質評価は,一般消費財と異なり,化学的内容にまで及んでいる。このため農産物固有の品質規定とその水準を設定する必要がある。この品質規定についてはおよその案を策定したが,その規定に沿った品質水準を背景に,国際市場における品質競争力をどのように強化できるかの解明が残されている。この課題の解明が第二年度におけるもう1つの研究事項で,これより国際市場下での品質競争力の強化方向を明らかにしたい。
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