2カ年にわたる調査研究で得られた知見は以下の通りである。 1.農家労働力の高齢化のもとで、農地利用は急速に後退しつつある。とりわけ畑作地帯では、農業労働力の脆弱化が農業構造の変化にストレートに結びついている。 2.上記の点は畑地の流動化を促進する条件ともなる。旺盛な農地流動化を巧みに利用しながら、ごく短期間に急速な規模拡大を達成した農家が少なくないのもこうした理由による。しかし借地型規模拡大が可能となるには、耕地基盤の整備、担い手農家の存在、農地流動化を促進・斡旋する仲介機関の存在などが不可欠である。 3.しかし畑作地帯にはこのような条件を欠く地域が多い。こうした地域では、高齢化が即農地利用の後退に結びつくことになる。それゆえ畑作地帯の農業再編には、多様な経営体が用意されなければならない。 4.畑作農業組織化の代表的なシステムが農業管理センターである。農協が設立主体になるケースが多いが、大型機械を整備しそのリ-ス事業や農作業受託、流通・加工対応、経営情報の提供など、個別経営の展開を支援し補完するという機能を果たしている。また近年では、農外企業が農作業受託業を始めるケースも珍しくなくなったが、その経営上のノウハウには学ぶべき点が多い。 5.個別経営を補完するだけではもはや地域農業の空洞化を防げない地域も多い。こうした地域では個別経営に代替する新たな経営体の模索が始まっている。農協直営事業はその代表的実践である。農協が耕作放棄地を受託し、スカウトした管理者の身分保障をしながら経営管理を行っている。農地の荒廃を防ぎながら、新規参入型の担い手を育成する試みとして注目に値する。
|