霞ヶ浦の湖水の流動、および湖面上に浮遊するアオコの動きを追跡するため有限要素法を用いて解析した。ただし、今回は流れの概要を把握するために、最も簡単な定常流モデルを用いることとした。その結果、湖水の動きに最も影響を与えるのは、湖へ流入出する水による移流ではなく、湖上の風による剪断力であることが分かった。しかし、洪水時の湖水の流動は、河川流入の影響が卓越している事は明らかで、今回の定常解析では、それの解析は本来的に不可能であった。また、数値計算から求められた風の剪断力による効果は、実際に観測される以上に大きくその原因は、やはり風の動きを定常として扱ったためと考えられる。 数値シミュレーションが、どの程度実際の現象を再現しているかを調べる方法として、アオコの動きに注目し、実測された調査資料を収集する方法とランドサット衛星画像による方法を検討した。前者に関しては資料は存在するが公表されておらず、入手は困難であった。後者に関しては、アオコの発生が盛んな夏期には湖面に霞がかかることが多く、鮮明な画像の数は少ないが、最も有力な検証材料になることが判明した。 一方、安濃ダムの湖水の鉛直方向および水平方向の水温・濁度・溶存酸素濃度・BOD・COD等の分布を測定した。今年の安濃ダムは、湖内の雑木を伐採するため、夏期に総貯水容量の3/4を放流したので水量は少なく、湖内の状態は一様に近かった。これは渇水時にダムからの放流がさかんに行われ、湖内が混合されている状態である。実際、その後の調査で、本来なら12月頃に起こる湖水の大循環が、10月の中頃に観測された。ただし、この様な場合問題となる濁水の長期化現象は観測されなかった。その理由は、貯水池が混合型になったのは洪水によるものではなく、人為的に水位を下げたためで、洪水時の場合とは異なり、湖中に濁水塊ができなかったためと考えられる。
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