用水の反復利用地区の水管理と水循環の実態を調べ、そこに支配する水質の影響を明らかにしようとした。平成4年度の灌漑期における用・排水路の主要地点の流量記録を入手し、また水管理方法を管理人等から聞き取り、これらを基に、自然取水系と機械取水系の水収支結果を比較した。別途に、水路の上流と下流および用水路と排水路の水温・電気伝導度の連続観測によって水質の変化並びに伝播の位相差を求めた。これらの結果、本年度は次の知見が得られた。 1.自然取水系では用水の到達時間をいくらか考慮してはいるものの、水管理の安定性の観点から水路送水量の時間的変化は少ない。したがって、降雨の有効化割合は少なく、施設管理用水量が発生しやすい。この施設管理用水を集水した排水路が下流部の水量不足地区の用水源の機能を保障している。 2.機械取水系では用水の到達時間をも考慮した水管理を採り、管理用水量は比較的少ない。有効利用が図られるとは言えるが、反復利用水田の水源は不安定であり、用水配分は極めて厳しいので、水管理施設・労力が必要とされている。 3.水田からの流出負荷は、自然取水系の上流部で大きな値を示し、下流の反復利用により排出負荷は減少する。即ち、反復利用は自流域からの排出物を濾過し、環境汚濁を緩和させることができる。 4.機械取水系では、反復利用水田と非反復利用水田とで排出負荷量に大きな違いがない。従って、自然取水系でみられたような反復利用による浄化機能は顕著でない。 以上の結果は自然取水系と機械取水系の比較、反復水田と非反復水田のマクロな比較によるものであり、内部メカニズムの考察を深めるために、水量と水質観測点の位置を変えてみる必要があると考えている。
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