研究概要 |
反復利用地区として約4,600haの地区を取り上げ、水量と水質を指標として、自然取水系と機械取水系との比較、上流部と下流部の比較、用水と排水の対比を行った。また、反復利用地区と非反復利用地区との比較も行った。さらに、約60haの循環灌漑地区の下流端に設けられたファームポンドを対象に、その水量調節効果と、用水及び排水の混合希釈された水質の経時的変化を調査した。1993年は多雨・冷涼な天候であったため、反復利用や循環利用の必要性が少なかったことから必ずしも十分な資料が得られたわけではないが、1992年〜93年の両年の調査結果から、以下の結果が得られた。1.水循環の機構を反映させ、反復利用を考慮した複合タンクモデルを導入することによって、用水の還元過程を追跡することが可能となった。 2.水田の浄化及び汚濁機構の概要を把握した。すなわち、反復利用水源がすでに汚濁しているときには水田が浄化型に作用する。逆に清浄な水源の場合には排水濃度を増加させる。すなわち、水田の緩衝作用を実証できた。 3.水田ファームポンドはポンプ用水系地区において用水の有効利用に効果的であるが、排水路からの反復利用を導入した循環灌漑地区では、なお一層有効に働くことが分かった。 4.用水利用量の多い水管理体系では、管理労力が少なくてよく、水質の濃度は比較的低いが、循環する負荷量が大きいので、地区外環境への排出負荷が大きい。反復利用方法の導入によって、用水の水質濃度がいくらか高くなるが、単純な水管理方法によって、用水量の均等配分が可能であり、また環境への影響を減らすことができる。
|