本研究は、情報処理技術を水理現象の実験データの計測・処理に適用し、データのもつ有用な情報を抽出する新しい手法を確立することを目的としている。本年度得られた成果は次のとおりである。 1)水利施設の水理設計評価:洪水吐減勢工の減勢評価に時間的水面変動の特性を導入した。水面変動の解析にRescaled range analysisを適用してこの手法により減勢池内の流況の良否の判定が一般的かつ容易におこなえることを示した。成果の一部は農業土木学会支部発表会において公表した。問題点としてデータ処理に時間を要するので、より高速のデータ処理が必要であることが判明した。 2)流れの音環境特性の抽出:自然環境および水利施設の周辺の流れにより発生する音を収集し、その音響特性を分析した。情報の処理にはスペクトル解析、ソノグラム解析を適用し音の可視化を図った。データ処理には市販のパッケージソフトで十分対応できることが判明した。流れにより発生する音はそれぞれ特徴はあるものの本質的にはノイズであり、とりわけ水利施設周辺の音はパワーが強く騒音となることが見いだされた。また、音解析には音響的検討のみならず人間の感覚的な検討の必要性が確認された。 3)水生植物と流速場の相互作用の解析:擬似植生および実際の水生植物を植えた開水路流れにおいて流速変動場を計測すると同時に水生植物の揺らぎの様相をビデオ撮影した。平均流速場の特性は明らかにされたが、変動場の特性を抽出する有効な方法および画像処理を効率良くおこなう方法を検討中である。 本年度は研究の初年度であり、解析のための情報処理機器とソフトウェアの整備に焦点を合わせて研究を進めた。当初の計画どおりの成果がえられ、今後の問題点が明確になった。
|