研究概要 |
真の作業速度すら表示されない農用トラクタ作業機システムを改善するため,筆者らは超音波ドップラーレーダー速度計を用いた「汎用トラクタ作業モニタ」を開発した(研究発表欄1,3参照)。本研究は,トラクタ作業機の自動制御手法を整理総合して,一台で複数の作業機に使える「汎用自動制御モニタ」の開発を目的とする。 本年度は,情報モニタとして開発した装置を改造し,制御出力を持たせて制御モニタを完成した。本装置には,独自開発のレーダー速度計のほかに,駆動輪回転計・燃料流量計・作業スイッチなどを装備して,各瞬間の対地速度・車輪すベり率・燃料消費率・PTO回転数などを計測し,最大効率を発揮する運転,作業機の性能を最大にする運転,各種生産資材の均一な散布などを実現するような制御出力をする基本機能を持つ。 次に,試作制御モニタを農薬散布のブームスプレーヤに適用し,散布量制御(問題点は研究発表欄2参照)に人工知能を付与した制御法を開発した。これは,制御誤差が減少傾向にある時の調節器出力には,P(t)=K・K_PΣE'として過去の誤差の極値(E')をK_P倍する一定値で早急に誤差を減らすようにし,逆に誤差が増加傾向にある時の調節器出力は,P(t)=P(t-1)+K・E(t)により誤差(E)のK倍の修正を直前の出力に与えて,素速く増加を停止させようとする人間を模倣した手法を基本にしている。台上・圃場試験の結果は,比較的よい安定性,速応性,外乱制御性を発揮して農作業機の制御手法として有効な手法と判断した。ここで得られた結果は,平成5年4月に弘前大学で開催される農業機械学会年次大会で発表する。次年度は,これらの試験装置を実際の農業の場に供し,その有効性の試験を進めながら,新たに播種機と施把機の制御機構と人工知能ソフトウェアを開発し,それらを総合化して制御モニタ全体を通しての基本制御手法を確立する所存である。
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