電解水の防除への利用のための基礎的データを得ることを目的として、電解水の利用法と物性変化、電解水のナス科植物青枯病菌への殺菌効果について調べた。さらに、NFT水耕栽培における電解水による根圏部殺菌の実用化のため、栽培ベッド循環電解水の青枯病菌殺菌効果の経時変化を調べるとともにトマトの養液栽培における電解水の青枯病防除への利用を検討した。結果は以下のように要約される。(1)酸化水及び還元水のpHとORPの関係は試薬によるpH調整水のpHとORPの関係から大きくはずれることがわかった。無隔膜電解水はpH7.18〜8.58で、試薬によるpH調整水に比べて同一pHではORPの値がかなり高いことがわかった。(2)酸化水の砂層透過において、透過前の物性を保持するのに砂の体積の1.5倍以上は必要ということが分かった。(3)酸化水(pH=3.91〜5.57)は青枯病菌(10^3〜10^7cfu/ml)に対して高い殺菌効果がみられた。一法、還元水(pH=10.54〜12.00)、塩酸水溶液(Hcl)(pH=3.91〜5.56)、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)(pH-10.56〜11.99)全てにおいて10^3〜10^5cfu/mlの青枯病菌に対して殺菌効果がみられなかった。この結果から、水素イオン濃度は殺菌効果の主な要因ではないと思われる。(4)NFT栽培ベッドにおける間欠給液による循環電解水の青枯病菌(10^5cfu/ml)に対する殺菌効果の持続時間は電解水50lの場合は9〜12時間、100lの場合は24〜48時間、200lの場合は48〜72時間、循環しないでタンク内で保存した電解水50lの場合は48〜72時間であった。(5)トマトのNFT栽培における青枯病の防除の結果、電解水による防除効果がみられた、一方、通常の培養液を毎日全量交換した場合において、青枯病は防除できなかった。pH調整剤で調整した電解水の殺菌効果を調べた結果、pH5.58及びpH5.6にそれぞれ調整した電解水は青枯病菌(10^5cfu/ml)に対して高い殺菌効果がみられた。
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