平成4年度は、東北地方の基幹草種であるオーチャードグラス及び不良環境に強いトールフェスクと対比しながら、リードカナリーグラスの再生過程を、春、夏、秋の季節別に、各10週間の再生過程を週一回の頻度で追跡調査した。 リードカナリーグラスはオーチャードグラスに比較して、初期再生が緩慢で光合成器官である葉の面積の確保が遅く、葉面積指数(LAI)当たりの純同化率(NAR)は変らないので、収量生長速度(CGR=NARXLAI)が上がりにくく、再生長中期までの収量は低く推移した。 しかし、過繁茂になりにくいので、再生長後期になっても枯死部の発生が少なく、夏は生体部だけの収量でみると、枯死部の発生が多いオーチャードグラスの収量を上廻った。また、川株貯蔵炭水化物(TNC)含有率の刈取後の回復が、夏でも他の草種より長期にわたって良好であり、遅刈りに適していることが明らかになった。 NとPの含有率は高く推移するがK含有率はオーチャードグラスよりもかなり低く、したがって、K/(Ca+Mg)当量比が低くなってミネラルバランスが良いことが認められた。 しかし、夏はリードカナリーグラスの硅酸含有率が急速に高まって他の草種を大巾に上廻り、可消化有機物含有率が再生長の前半で急速に低下して他の草種よりかなり低く推移した。 したがって、可消化有機物量は春から秋までオーチャードグラスよりかなり低く推移し、各草種をそれぞれ適期に刈り取ったとしても、リードカナリーグラスの年間の可消化有機物収量は、オーチャードグラスよりかなり低くなるものと予想される。 なお、下痢や採食に影響するリードカナリーグラスのアルカロイド含有率は、採草利用の時期には問題にならない水準まで低下した。
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