本研究では、まず、(1)雌豚卵巣リラキシン(RXN)の遺伝情報を基にPCR法でRXN cDNAプローブを作製し、次に、(2)このプローブを用いて雄豚精嚢腺におけるRXN遺伝子の発現を検索し、さらに、(3)雄豚精嚢腺におけるRXNの発現調節についても検討を加え、以下の成果を得た。 1.RXN cDNAプローブの作製:Haleyら(1988)により、豚卵巣RXN遺伝子の塩基配列が明らかにされているので、申請者は、この情報を基に、豚ゲノムDNAを鋳型として、RNXペプチドをコードしているcDNA断片をPCR法で増幅させた後、組換えDNA実験操作を行い、クローン化プラスミドDNAを作製した。シーケンスの結果、その塩基配列は問違いなくRXNペプチドをコードしていることが確認された。制限酵素を用いて目的のcDNAをプラスミドから切り出した後、ランダムプライマー法で非放射性物質(ジゴキシゲニン)を取り込ませてプローブを作製した結果、RXN messenger RNA(mRNA)を高感度で検出できることが解った。 2.雄豚精嚢腺におけるRXN遺伝子の発現:上記で作製した豚卵巣DNAプローブを用い、Northern blotハイブリダイゼーション法により、雄豚精嚢腺におけるRNXmRNAの検出を試みた。その結果、対照区の卵巣では約1.0kbpの位置に一本のRNX mRNAの発現を見た。しかし、実験区の精嚢腺にはシグナルが検出されず、雄豚精嚢腺では、卵巣型(雌型)RXNの転写が行われていないことが判明した。この実験結果から、精嚢腺RXNは卵巣RXNと同一の遺伝子産物ではなく、異なる遺伝子から発現した産物であることが明かとなった。 3.雄豚精嚢腺におけるRXNの発現調節機構:去勢した雄豚にテストステロン投与を行い、免疫組織化学法により、精嚢腺RXNの発現調節を検討した。その結果、RXNはテストステロンの支配を受けて雄豚の精嚢腺で発現することが判明した。
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