骨髄骨は鳥類雌の特異組織で、産卵期になると骨髄腔に出現する。骨髄骨の形成はエストロジェンによって誘発され、成熟した雄鳥にエストロジェンを投与することによって人為的に骨髄骨を形成させることが可能である。この骨髄骨の形成過程において骨髄内に多数のアルカリファスファターゼ(ALP)陽性の骨形成系細胞が出現することが知られている。これらの骨形成系細胞はエストロジェンレセプターを有していることからエクストロジェンの支配を強く受けていることが示唆されている。本研究では、骨形成系細胞を分離・培養することを試みて、これらの細胞の増殖に対するエストロジェンの作用と骨形成能を調べた。 エストロジェン処理を施した雄ウズラの大腿骨骨内膜表面および骨髄内から、酵素処理と培養皿に付着する性質を利用して骨形成系細胞を分離した。分離した細胞の60%は、ALP陽性の骨形成系細胞であった。これらの得られた細胞を、エストロジェンを10^<-9>、10^<-8>および10^<-7>M含むBGjb培地で144時間培養したところ、エストロジェン無添加の条件で培養した培地に比べ、エストロジェンを添加した培地では、エストロジェン濃度に依存してALP陽性細胞の割合が増加した。また、^3H-チミジン2μCi/mlを含む培地で1時間培養してオートラジオグラフィで観察したところ、エストロジェン濃度に依存して骨形成系細胞の^3H-チミジンの取り込みが促進された。さらに、抗エストロジェン剤であるタモキシフェンを含む培地で培養したところ、骨形成系細胞の増殖が抑えられた。以上のことから、エストロジェンは骨形成系細胞の増殖を刺激することが窺えた。一方、骨形成細胞は培養1週間後に単層状にconfluentに達し、培養2‐3週間後に重層状に観察され、その周囲に基質形成がみられた。培養4週間後にvon kossa陽性のカルシウムが沈着したnoduleが観察され、骨形成系細胞は骨形成能を有していることが示唆された。
|