1.マウス、ハムスターおよびウサキの胚について、胚盤胞形成過程をビデオカメラで連続的に撮影して観察したところ、ハムスターでは8細胞期、マウスでは8および16細胞期、ウサギでは32細胞期に外側の割球が扁平に変形するとともに、胚は小型化した。肺の小型化の程度はハムスターで著しく、次いでウサギ、マウスの順であった。小型化した胚の割球は分裂を繰り返し、胚は内部に腔を生じて胚盤胞に移行した。2.マウス2細胞胚をカルシウムを除いた培養液(Ca-FM)および抗Le^X抗体を含む培養液(Le^X-CM)で培養したところ、胚は8および16細胞期まで発生し、Ca-FMでは胚は小型化しなかったが、Le^X-CMでは胚は小型化した。しかし、Le^X-CMで小型化した胚は、この状態を維持できずにすべての割球は球形に戻るとともに、割球は離散する傾向にあった(デコンパクション)。3.胚盤胞形成過程のマウス胚において、接着帯あるいはデスモソームの構成要素であるアクチンおよびサイトケラチンは、すべての時期の胚の割球と細胞の細胞質に存在していた。なおアクチンは、小型化した胚と胚盤胞では割球あるいは細胞同士が接する部位の細胞膜直下に多く分布していた。一方、ウサギ抗ケラチン抗血清に反応性のサイトケラチンは、小型化していない胚の割球では顆粒状であったが、小型化した胚の扁平割球と胚盤胞の細胞では線維状を呈していた。また、マウス抗サイトケラチンペプチド14に反応性サイトケラチンは、胚盤胞の細胞にのみ線維状を呈して存在していた。なお、Ca-FMおよびLe^X-CMで発生した小型化していない8および16細胞胚では、アクチンとサイトケラチンの状態は上述のものと相違なかったが、Le^X-CMで小型化した胚では、アクチンは割球の細胞膜直下に局在しており、サイトケラチンは顆粒状のままであった。また、デコンパクションを起こした胚では、これらの細胞骨格系フィラメントは著しく少なかった。
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