研究概要 |
目的 我が国における牧場,農家の草地植生とその生産・利用量の実態を明らかにする,すなわち,どんな草地植生が,どれだけ家畜生産の栄養供給に貢献しているかを把握する.このことは,難しい問題を含んでおり,今まで明らかになっていない.複雑な草地の状態をマクロに把握するのに優占種群による草地型の概念を使い,草地の生産を家畜に結びつけるのにUTDNの指標を用いた. 調査地 南日本は大分県久住山麓地域の2公共牧場と2共同牧場(A),中部日本は静岡県富士山麓地域の75戸の酪農家と1共同牧場(B),北日本は北海道根釧台地地域の9戸の酪農家(C)を対象とした.調査地の温量指数は,A;82,B;71,C;44である. 調査法 草地型はポイント法により優占種を決めた.UTDN(利用TDN)は,飼養家畜の必要TDNから購入飼料のTDNを減じて求めた.このデータは農協,農家,牧場から,家畜頭数,産乳量,購入飼料のTDNなどを入手し,飼養標準に基づいて計算した.この指標は英国におけるUtilized Metabolic Energyと同じ概念である. 調査結果 1.植生型は,A;野草地・混牧林はネザサ・ススキ型,牧草地はトールフェスク・イタリアンライグラス・オーチャードグラス型,B;オーチャードグラス・イタリアンライグラス型,C;チモシー・アカクローバ・オーチャードグラス・シロクローバ型で,それぞれ特色ある雑草,劣等牧草を混じていた.2.ヘクタール当りUTDN(Kg)は,A;野草地760,牧草地4,636,B;農家の牧草地7,096,公共牧場の牧草地3,150-5,540,C;牧草地2,775であった.3.このUTDNのデータから,(1)日本の生産水準が高くなく,向上の余地が多い,(2)久住では温量指数が大きいにも係わらず低い,(3)富士山麓農家では現在は高いが,以前は低く,公共草地は格段に低い,(4)根釧では放牧地,遠隔地,凹地の植生が悪く,UTDNを低くしていることが指摘される.
|