研究概要 |
平成5年度は、前年度に調製したマウスB細胞マイトジェンである免疫グロブリンG1(以下SB-IgG1)のレセプター構造を明らかにするための基礎的な検討を行なった。すなわち、SB-IgG1のα-D-グルコースに対する特異的認識性を利用して、以下の2分野におけるレクチン様染色を試みた。 1.PVDF膜上での糖タンパク質のレクチン様染色 α-D-グルコースを非還元末端に結合するN-グリコシル型糖鎖を有するニワトリ免疫グロブリンG(以下IgY)および高マンノース型のN-グリコシル型糖鎖のみを結合するニワトリオボアルブミン(以下OA)の2種の糖タンパク質をモデル試料とした。試料を常法に従いSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、PVDF膜に電気転写した。ビオチン標識したコンカナバリンA(以下B-ConA)では、IgYおよびOAが共に染色されたが、ビオチン標識したSB-IgG1(以下B-SB-IgG1)では、IgYのH鎖のみが染色され、両者の染色性は全く異なることを発見した。 2.動物組織切片におけるレクチン様染色 α-D-グルコースを非還元末端に結合するO-グリコシル型糖鎖を有するコラーゲンのI,IIIおよびIV型が混在するラット腎臓組織をモデル試料とした。試料を常法に従いパラフィン切片とし、内因性のペルオキシダーゼを失活させた後、レクチン染色した。B-ConAでは、細胞質を含む腎組織全体が染色されたが、B-SB-IgG1では血管の結合組織(I、III型コラーゲン)および腎小体の基底膜(IV型コラーゲン)のみが染色され、染色性が全く異なることを発見した。 以上よりSB-IgG1は、α-D-グルコースを結合する未知の糖タンパク質の有用な検索用試薬としても、十分利用可能であることが示唆された。
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