目的:鶏卵にはコレステロールが比較的高い割合で含まれており、鶏卵中のコレステロールを低下させる飼養法の研究がなされている。そのため卵黄中コレステロールの起源を肝臓だけでなく、肝臓以外の臓器、小腸粘膜でのコレステロールについて検討した。方法:飼料中脂肪の不飽和度(実験I)及び脂肪を構成している飽和脂肪酸の炭素鎖の違い(実験II)によって、成長中鶏の肝臓と小腸粘膜上皮におけるHMG-CoA reductase活性に及ぼす影響、また産卵中と休産中の鶏のこの酵素活性を比較検討した(実験III)。結果:実験Iでは、肝臓のこの酵素活性はタロー給与区が最も高い値を示した。一方、小腸粘膜上皮ではオリーブ油給与区が最も高い値を示し、サフラワーあるいはココヤシ油を給与した区はオリーブ油を給与した区に比べて統計的に有意に低い値を示した。実験IIでは、肝臓での酵素活性は脂肪無添加区とトリラウリン給与区が高い値を示した。小腸粘膜上皮では空腸、回腸ともに、トリラウリン給与区が他のトリグリセリド給与区より高い活性を示した。また空腸より回腸の方がこの酵素の活性は高かった。実験IとIIの結果から、小腸粘膜上皮におけるコレステロール合成能は、肝臓でのそれと、また、血漿、肝臓、小腸粘膜中のコレステロール含量との間には相関が観察されなかった。実験IIIでは、肝臓でのHMG-CoA reductase活性は産卵中鶏の方が休産鶏に比べて統計的に有意に高い値を示した。一方、小腸粘膜上皮のこの酸素活性は産卵中鶏の方が休産鶏に比べて低い値を示し、小腸粘膜上皮で合成されるコレステロールは卵黄形成には関与していないことが推察された。産卵及び休産中いずれの鶏も回腸粘膜上皮細胞のHMG-CoA reductase活性は空腸粘膜上皮細胞のそれより統計的に有意に高い値を示した。小腸粘膜上皮中のコレステロール含量は産卵中と休産中鶏との間には大きな差は観察されなかった。
|