本研究では、自作した環境調節室を用いて2回の実験を行い、血中ホルモンと筋肉蛋白質の代謝回転速度等に対する環境温度の影響を調べた。 環境温度は、実験1では25℃、28℃および31℃とし、実験2では25℃、22℃および19℃とした。湿度は60±10%に制御した。供試ブロイラーとしては試験開始時15日齢の雄(チヤ ンキー)を使用し、飼料は、十分量を供試鶏全てに正しく同量、強制給餌した。筋肉蛋白質の合成・分解速度はNtau-メチルヒスチジン法により測定した。血中サイロキシンは市販のキットを用いてEIA法により、血中コルチコステロンはHPLC法によって定量した。 その結果、増体量は低温区に比べ高温区で有意に増加した。飼料要求率は高温区で有意に低下した。筋肉蛋白質の合成・分解速度はいずれも低温で増加、高温で減少したが、本実験では有意差を示すことができなかった。血中サイロキシンは、予想どうり、高温区で低下、低温区で増加した。血中コルチコステロンは、高温により低下、低温により有意に増加した。本実験では有意差が得られれなかったが、筋肉蛋白質の代謝回転が環境温度によって変化することはすでに確認済みである。甲状腺機能は低温環境で賦活されるが、著者らはすでに筋肉蛋白質の合成・分解速度が甲状腺機能と密接に関連することを明らかにしており、低温環境で筋肉蛋白質の合成・分解速度が早くなる事実をよく説明できる。一方、血中コルチコステロンは、高温により低下、低温により有意に増加したが、著者らは甲状腺ホルモンとコルチコステロンが相乗的に筋肉蛋白質の分解速度を高めることを認めており、両ホルモンが共同的に作用するとすれば、暑熱による筋肉蛋白質の合成・分解速度低下を一層よく説明できる。
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