1.オーエスキー病ウイルス(ADV)の感染後最初に発現される前初期(IE)蛋白分子上の転写調節領域を決定するため、IE遺伝子及び欠失IE遺伝子が発現する蛋白のSV40初期プロモーターに対するトランス活性化作用及びADV IEプロモーターへの転写抑制作用をクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼアッセイにより解析し、以下の成績を得た。IE蛋白のSV40初期プロモーターに対するトランス活性化作用には、IE蛋白のほとんどすべての領域が必要であることが判明した。一方、ADV IEプロモーターに対する転写抑制作用には、IE蛋白のアミノ末端から1230番目までのアミノ酸配列が関与していることが判明した。現在、転写抑制に関わる領域をさらに限局するため、IE蛋白のアミノ未端を欠失した蛋白を発現する欠失遺伝子を作製している。今後、限局された転写抑制領域のみを発現する遺伝子を導入した細胞株を樹立し、ADV感染に対する抵抗性を調べる予定である。 2.ヒト単純ヘルペスウイルスのαトランス活性化誘導因子の結合ドメインとADV IE蛋白のDNA結合ドメインから構築されたキメラ蛋白の遺伝子を導入した細胞がADV感染に抵抗することを見いだした。このウイルス増殖阻害のメカニズムを解明するため、このキメラ蛋白がADV IE遺伝子の転写に及ぼす影響を調べた、その結果、キメラ蛋白の転写抑制作用が判明した。また、この遺伝子を導入した細胞において、ADV感染後に転写されるIE mRNA量が対照の細胞に比べ著しく減少していることが明らかになった。従って、樹立した細胞株のADV感染に対する抵抗性に、このキメラ蛋白によるIE遺伝子の転写抑制が関与していると考えられる。
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