研究概要 |
鶏栓球は、哺乳動物の血小板に相当する有核細胞であり、血小板と同様に止血作用に機能することが明らかにされているものの、血小板由来の各種細胞増殖因子群が鶏栓球においても存在するか否か明らかでなかった.私達のこれまでの研究から,鶏栓球の細胞質内に,細胞接着因子をはじめ種々の生理活性因子が存在することが明らかにされた.更に,鶏栓球の無血清培養上清(TSP)中にも同様の因子群の存在が明らかにされつつある.本研究では,鶏栓球ならびにTSPを用い,これらの中に,鶏の各種細胞に対して増殖活性を持つ因子群の存在を明らかにするための研究を実施し,下記の諸点を明らかにすることができた. (1)鶏ならびに哺乳動物由来の各種細胞株や初代細胞等(鶏胚線維芽細胞,鶏TおよびB細胞株,哺乳動物由来細胞株;Vero,RK-13MDBK,CHO,HeLa)に対するTSPの細胞増殖活性を調べ,TSPは,鶏胚線維芽細胞,Vero,RK-13,MDBK,CHO,HeLa等の線維細胞ならびに上皮細胞に増殖活性を有することが明らかとなった.(2) (1)において,特に鶏胚線維芽細胞,VeroはいずれもTSPに対する感受性が高かったので,この2種の細胞を用いて,TSP中の活性因子の精製を試みた.濃縮TSPをゲラチンアフィニティカラムにかけてその存在を明らかにしてあるフィプロネクチンを除き,続いてヘパリンアフィニティカラムの吸着画分を得た.この画分にもなお細胞増殖活性が認められた.(3)鶏栓球やTSPを免疫原として用い,これらを認識するマウス単クローン抗体の作出を試み,多数の抗体産生ハイブリドーマクローンを得た. 以上から,栓球中に鶏細胞や哺乳動物由来細胞株に対する増殖因子群の存在,これら因子の精製や抗体の作出が可能であること等が明らかとなった.これらの成果は,次年度の研究に役立つものと確信できる.
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