主にラット腸間膜動脈の抵抗血管を用いて、腸間膜動脈血管床の潅流実験、抵抗血管条片の張力およびCa^<2+>蛍光色素fura‐2による細胞内Ca^<2+>濃度測定実験より以下の知見を得た。 (1)抵抗血管を微小標本を作成してα_1受容体興奮による収縮と細胞質Ca^<2+>濃度に対する筋小胞体修飾薬の影響を検討した。筋小胞体へのCa^<2+>取り込みを抑制するcyclopiazonic acidの作用からα_1受容体収縮中には筋小胞体へのCa^<2+>取り込みが亢進していることが示された。また、筋小胞体のCa^<2+>透過性を非可逆的に増加するryanodineの作用から収縮中にはCa^<2+>によるCa^<2+>遊離が増加していることが示された。そして、Ca^<2+>取り込みと遊離の両機能の亢進の結果、α_1収縮中には筋小胞体内Ca^<2+>量は静止時に比べて減少していることが示唆された。 (2)α_1受容体には2種あり、受容体興奮薬の濃度が低いときには主にCa^<2+>チャンネルからのCa^<2+>流入が主体となり、高濃度になるとイノシトールリン脂質代謝の産物が寄与するようになることが示唆された。 (3)同じ腸間膜動脈血管床であっても径の太い部分(弾性動脈)と細い部分(抵抗動脈)では筋小胞体の役割は異なり、細い部分ではCaを緩衝する機能が強くなる可能性が示唆された。 (4)血管床潅流実験で交感神経を刺激したときの内因性ノルエピネフリン(NE)と外因性に投与したNEによる収縮に対するジヒドロピリジン系Ca^<2+>チャンネル遮断薬nicardipineの効果を比較するとnicardipineは外因性NE収縮に対してはNE濃度に関係なく一様に収縮を抑制したが、内因性NE収縮は刺激頻度が高いときほど強く抑制した。この原因は検討中である。
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