1.鳥類間における松果体の生体時計の有無および光同調機構の有無の比較 鳥類の生体時計は松果体に存在すると一般に考えられているが、松果体を摘出してもリズムが消失しない例も報告されている。そこで、種々の鳥の松果体細胞を培養し、これを還流することによって放出されるメラトニンホルモンを経時的に回収した後、そのリズムの存在の有無を検討した。ハト、スズメ、ヒヨコ、ウズラを用いたが、明暗交代条件下ではすべての松果体細胞で明期に低く、暗期に高い分泌リズムがしめされた。このことは、これらの鳥類の松果体細胞には光同調機構が存在することを示唆している。次に、恒常暗下で細胞還流を行うと、ハト、スズメ、ヒヨコの松果体細胞はメラトニン分泌リズムを継続したが、ウズラの松果体細胞はリズムの消失を起こした。このことは、ウズラの松果体には時計の発信体が存在しないか、存在しても非常に微弱であることを示唆している。以上のことから、鳥類の種によって松果体細胞の時計機構には差がある事が判明した。 2.松果体細胞の光同調機構 鳥類の松果体に光を照射するとメラトニンの急激な分泌低下が起こる。この機序としてプロテインキナーゼC(PKC)の関与の可能性について検討した。TPA(フォルボルエステルの一種)を細胞培養に添加すると、添加量依存的に光と同様にメラトニン分泌低下を誘起した。PKCの阻害薬スタウロスポリンを光照射と同時に添加するとメラトニン低下を阻止した。以上のことから松果体細胞の光によるメラトニン分泌低下にはプロテインキナーゼCの関与が考えられる。 3.ラット視交叉上核の時計関連蛋白質について ラットの視交叉上核の神経細胞を明暗条件化で3時間間隔で調整し、3時間の培養中に合成される蛋白質を2次元電気泳動法、およびイメージスキャナーで検索した。その結果、64KDaの蛋白質が時刻依存的に合成されること、また他の神経細胞では合成されないことが判明した。このことからこの蛋白質は時計機構に関係していることが示唆された。
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