現在は、手を広げて研究をしていることろであるが、平成4年度の研究経過の主だったところは下記の6点である。 1.1992年末までに国内数ケ所の家畜病院から依頼された約400症例についてイヌカリキウイルスの検出を試みたがoriginal分離症例1例(No.48株)以外の陽性例は見られていない。 2.1例からネコカリキウイルスと共通抗原性を有するウイルスが検出された。このウイルス(Sapporo/283株)はUSA以外では初めての検出であるが、我々のin vitro分類法では呼吸器系のカリキウイルスと分類された。ネコからの種間伝播の可能性が示唆された。 3.イヌカリキウイルスNo.48株はイヌに不顕性感染すると考えられ、病原性は弱いと推定される。 4.糞便内ウイルス検出のためのELISA法を確立するために、モノクローナル抗体の作出を試みたが、適切な抗体は得られなかった。現在、再作出を行なっている。これは現在計画中のウイルスゲノム解析にも有用である。この目的のためのELISA法はpolyclonal血清を用いて、検討中である。 5.イヌカリキウイルスNo.48株にはヒトのカリキウイルス株とNorwalkウイルス抗血清に対する反応性(ELISA)は認められなかった。 6.抗イヌカリキウイルスNo.48株中和活性が5.5%(1:8-1:64倍)のヒト血中に検出された。特異性は検討中である。 これからの予定として、イヌカリキウイルスとネコカリキウイルスのモノクローナル抗体による抗原性の比較解析と、ウイルスゲノムの比較解析を考えている。
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