前年度迄の成績に基づいて鶏ロイコチトゾーン原虫の培養を行つたが、本年は培地だけではなく宿主細胞即ち鶏赤血球側の要因についても調べ、赤血球内で作られる生殖母体数の増加、生殖母体の発育維持に最も適した培養条件を検索した.その結果、1)原虫の培養に必要な馬血清の濃度は従来の10%よりも20%で用いた方が成熟した生殖母体の出現に良い事が分かつた.2)培地成分の塩類濃度として本年は塩化ナトリウムの濃度のみ種々な濃度に高めて培養に対する影響を調べた所、1.1倍の濃度が原虫の発育に最適であつた.3)赤血球内での原虫発育状態が用いた鶏の月令によつて変わるかどうかを調べたが、若い月令の鶏の赤血球を用いた方が生殖母体の形成が良好である事が分かつた.4)培養に用いる赤血球の原虫感染率の高低と培養後の成熟生殖母体出現率との関係を調べた.その結果、赤血球における原虫感染率が低ければ成熟生殖母体が多く出現する事が分かつた.5)本原虫では第2代メロゾイトが赤芽球、網状赤血球など未熟赤血球に侵入し、生殖母体に発育するといわれている.そこで鶏から血液10mlを採血して未熟赤血球を末梢血液中に出現させ、それらの赤血球に感染した原虫を培養する試みを行つた.その結果多数の成熟した生殖母体が出現することが見出された.
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