研究概要 |
動物の非免疫グロブリン因子の感染初期における役割を究明する目的で本研究では複合糖質に親和性を示す血清中レクチンの感染前後における血清中の動態を検討する。この目的を達成するために平成5年度においてはニワトリ,ウシ,ヒト血清中のレクチンに焦点を絞り,レクチンの分離・精製,抗原的異同の有無の確認,血清中の濃度推移を検討した。 ウシ血清中には3種のユンナン結合蛋白質(Kg,CL-43,MBP)が存在し,ニワトリ,ヒト血清中にはMBPのみが存在する。これらの蛋白質を分離・精製し,サルモネラRa型菌結合因子(RaRF)との比較を行った.これらの血清蛋白質の抗原的異同の有無をウエスタンブロットで検討した。その結果,ウシ,ニワトリ,ヒト血清中のMBPは抗原的にRaRFのコーポネントと抗原的に同一であることが判った。 感染前後に伴う血清中レクチンの濃度変化を比較するため,健常牛,乳房炎罹患前後の牛から分離した血清中のKg,MBP濃度を比較した。その結果,健常牛の血清中ではKg濃度は5倍程度変化するが,MBP濃度は殆んど変化しなかった。乳房炎罹患牛から分離した血清中のKg濃度は約50倍程度低下したが,MBP濃度は約2〜3倍程度低下したのみであった。また回復・治療に伴い、Kg濃度も上昇する傾向が見られた。 以上の成果から,血清中MBPは非免疫グロブリン因子の感染防御因子の可能性が示唆されたが,血清中の2-b-にはなり得ないと考えられる。しかしKgはウシの感染症2-p-の一つになり得る可能性が示唆された。
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