研究概要 |
既に我々は1985年、横浜港のハツカネズミが本ウイルスに対する抗体を保有していることを報告し、また1990年には大阪港のハツカネズミよりウイルスの分離に成功した。 これらハツカネズミの由来を明かとするために核、およびミトコンドリアのDNAに付いてハツカネズミの亞種同定用のプローブを用い、サザン ハイブリダイゼイション法により亞種の同定を行った。Mus musculus mollossinusはわが国の在来種であり、M.m.castaneusは台湾を含む東南アジアに分布し、M.m.domesticusは本来ヨーロッパ由来であるが現在米国にも分布している。 抗体陽性を示した横浜港、ハツカネズミはM.m.molossinusとM.m.castaneusとの混血であり、ウイルスの分離された大阪港の者はM.m.molossinus,M.m.castaneus,M.m.domesticusの3者が混血したものであることが判明した。一方、抗体陰性地域のものでは小笠原父島のものはM.m.domesticusのみが認められ、千葉港のものはM.M.castaneus,船橋のデパートのものはM.m.mollossinus,大阪空港のものはM.m.mollossinusであることが判明した。 以上の結果からわが国の本ウイルスは国外、特に東南アジアより持ち込まれた可能性が示唆された。現在まで本ウイルスが証明されているのはM.m.domesticusの生息地についてのみであり、M.m.castaneusの生息地から本ウイルスの分離あるいは抗体を証明した成績は発表されていない。今後はこの点からも追求、調査し、本ウイルスの世界的分布を明らかにする必要があると考えられた。
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