研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き、中国における調査を継続し、陽性例の見出された箇所は8カ所である。このうち6カ所はほぼ北緯43度付近にに西から東まで分布していた。他の2カ所は重慶と海南島三亜である(表3)。陽性率では7カ所は1例のみの陽性例であり、陽性率は15例中1例から4例中1例までであったが、吐魯番では10例中3例の陽性が認められ抗体価も高く濃厚な分布が認められた。これらのことから中国においてもLCMウイルスは南方亜種であるM.m.castaneusと北方亜種であるM.m.gansuensisの分布に一致して分布し、亜種とLCMウイルスの分布との間には密接な関係が認められた。 また、野生ハツカネズミの幼弱時における水平伝播による慢性感染ネズミの出現の可能性について1990年に大阪港で採取した、35匹のハツカネズミ中26匹の脾臓を用いた。内訳はウイルス陽性、抗体陰性4匹、ウイルス陰性抗体陽性13匹、ウイルス陰性抗体陰性6匹である。ウイルス陰性のもの22匹での分布はM.m.domesticus19匹、M.m,castaneus2匹,M.m.musculus1匹である。ウイルス陽性のハツカネズミはM.m.domesticus2匹,M.m.castaneus1匹,M.m.musculus1匹であった。ウイルス陽性とウイルス陰性の間にはウイルス陽性でややM.m.domesticusの占める割合が少ない傾向が認められたが有意差は存在しなかった。この結果、亜種の混在するところでは水平伝播による幼弱ハツカネズミの感染が起こることが証明された。
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