研究概要 |
この研究では内分泌細胞の分化転換のモデル細胞として私達がラットの下垂体腫瘍から独自に樹立したMATIS細胞を使用した。MATIS細胞は正常の培養条件下では成長ホルモンのみを産生し,プロラクチンを産生しないが,培養液にインスリンないしインスリン様成長因子を加えると成長ホルモン産生細胞が減少し,新たにプロラクチン細胞が出現してくる。すなわち成長ホルモン産生細胞がプロラクチン産生細胞に分化転換する。このMATIS細胞を使用して本年度は以下の事を明らかにした。 1)インスリンの他に上皮成長因子(EGF)を加えるとプロラクチン産生細胞への分化転換が早まり、その過程において成長ホルモンとプロラクチンを同時に産生するソマトマンモトロフが出現する。 2)ブロモデオキシラリジン(Bndu)によって増殖期の細胞を観察するとプロラクチン産生細胞に分化転換した細胞はBnduを取り込まないことが明らかになった。すなわち分化転換後は細胞の増殖が抑制されることを示している。すなわち細胞増殖の過程のMATIS細胞がプロラクチン細胞に分化する際には、その増殖が止まりGo期になることを示している。 3)コロニーを形成する細胞が分化転換する場合には殆んど全部の細胞が同調してプロラクチン細胞に分化する。恐らくこれらの細胞コロニー間に細胞分化のために何らかの情報伝達手段が存在するのか、もしくはこれらの細胞コロニーが産生する細胞外マトリックスに分化転換を促す機構が存在する事が考えられた。 4)下垂体において細胞の増殖や分化に関与すると思われる前葉の支持細胞である3胞星状細胞の細胞株(TATIGF)が新たに樹立された。
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