研究概要 |
刺激伝導系において筋収縮調節蛋白質troponinと収縮蛋白質actinはどのようなタイプのisoformが存在するか、それらは心筋や骨格筋のものとどのような類似性を持ち、またどのような相違性を持つかを調べた。心筋と骨格筋のtroponin成分(T,I,C成分)に対する特異的抗体を用いてニワトリの心臓について蛍光抗体法により観察した。心筋のtroponin T,I,C抗体により心臓の切片全体が染色された。しかし骨格筋のtroponin T,I,C抗体とは反応しなかった。刺激伝導系と特異的に反応する抗体は無かった。刺激伝導系を含む心筋全体が心筋のtroponin抗体と反応したので、刺激伝導系のtroponin成分は心筋タイプと同じと考えられる。 心筋troponin I、CのcDNAと骨格筋(速筋)troponinの合成DNAおよびβ-actinのゲノム遺伝子の一部をpGEMベクターに組み込み、それらのDNAからcRNAをそれぞれ合成した。このcRNAをプローブとして、各発生段階における心臓をin situ hybridization法により観察した。心臓はstage 10にはすでにtroponinのmRNAが転写されていた。この発生段階は心臓の拍動開始時期である。骨格筋のtroponinはstage 15以後の体節に発現していた。さらにstage 20における心臓と体節にはβ-actinが転写されているのがわかった。親の心臓では心筋のtroponin C、Iが切片全体にハイブリダイズした。これは心筋全体が心筋タイプのtroponin C、I mRNAを転写していることを示しており、刺激伝導系のみに発現するものはみつからなっかた。
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