研究概要 |
本年は昨年に続き心筋と刺激伝導系にどのような蛋白質があるかを、心筋と骨格筋のtroponin成分(それぞれCTnT,CTnl,CTnCとSTnT,STnl,STnC)に対する特異的な抗体(polyclonalおよびmonoclonal抗体)を用いてさらに詳しく調べた。 刺激伝導系のPurkinje fiberが平滑筋の中間系フィラメントを構成する蛋白質Desminに対する抗体により、強く染色されることが分かったので、この抗体によりPurkinje fiberの位置を同定し、連続切片を他の抗体で染色した。Purkinje fiberもCTnT,CTnlおよびCTnCに対するpolyclonal抗体により染色された。しかし染色性は心筋と異なっていた。すなわち抗CTnT抗体ではPurkinje fiberの横断面の周辺部のみが不連続的に染色された。CTnTのmonoclonal抗体D5(胸筋特異的抗体)ではPurkinje fiberが強く染まったが、F5D3(すべての骨格筋が染まる抗体)では染まらなかった。抗CTnl抗体では染色が弱かった。抗CTnC抗体においてもPurkinje fiberの染色は弱かった。しかし、cDNAの融合蛋白質を抗原として作成した抗体(CTnCnuc抗体)はfiber全体を強く染色した。またDesmin抗体で刺激伝導系が強く染色されたので、Purkinje fiberを構成する細胞内には中間系filamentが存在し、細胞を支持している事がわかった。 これらのことをまとめると刺激伝導系のPurkinje fiberは抗CTnT以外にD5にも反応し、この反応性は幼若心筋細胞に近いものである。またD5はPurkinje fiber全体を染めたが、polyclonal CTnT抗体では細胞の周辺のみが染色された。Fiberの中においてCTnT isoformの存在様式が異なるのかも知れない。
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