研究概要 |
蛍光抗体法による観察 心筋のtroponin成分に対する抗体(polyclonal CTnT,CTnIとCTnC抗体)を用いてニワトリの心臓について蛍光抗体法により観察した。心筋のTn抗体により心臓の切片全体(刺激伝導系のPurkinje fiberを含む)が染色された。またPurkinje fiberは胸筋のTnTに対するmonoclonal抗体(D5)とも反応した。この反応性は幼若心筋細胞に近いものである。Purkinje fiberはD5により全体が染まったが、CTnT抗体では細胞の周辺のみが染色された。Fiberの中においてTnT isoformの存在様式が異なることが示唆された。 in situ hybridization法によるC/STnCとactinの遺伝子発現について ニワトリ胚の心臓をin situ hybridization法により調べた。CTnC mRNAは孵卵30時間胚(stage 10)の心筋にはすでに発現していた。C/STnCは動脈幹、心室および卵黄静脈の心室側(卵黄静脈基部)に発現していた。卵黄静脈基部では血管の頭側壁と尾側壁の両壁にC/STnCの発現がみられた。しかしRuzicka and Schwartz 1988はalpha-actin遺伝子(心筋と平滑筋型)では卵黄静脈基部の頭側壁のみに発現し、尾側での発現は少ないと報告している。CTnCは卵黄静脈の尾側壁にも発現しているので、この部分において、CTnCとalpha-actinの遺伝子発現の調節機構が異なることが明かとなった。頭尾方向の遺伝子発現を制御しているのはホメオボックス遺伝子なので、これらの遺伝子が筋蛋白質の遺伝子発現も制御していると思われる。Stage 24(4日後)胚程度の心臓では、静脈洞はペースメーカーとして働き、親のペースメーカーも静脈洞に由来している。Tnは神経の興奮と筋の収縮連関に関わる蛋白質なので、卵黄静脈の広い領域におけるTnの発現は、Tnが心臓の拍動調節に関係した重要な働きをしていることを示唆していた。
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